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| 川の流れに木の葉 |
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| 川の流れの中に木の葉
沈んだり浮いたり 水流にもみくちゃにされて 大木に連なっていた頃の栄華はどこへやら その姿はまるで僕 沈んだり浮いたり 世の中にもみくちゃにされて 組織に連なっていた頃の栄華はどこへやら でも僕は木の葉じゃない 人間なんだ 人として産まれたことを 誇りに思って生きていきたい |
| みじめな気持ち |
| 優しいね、と君は言った
本当に優しい人だね、と君は言った 僕は心の中で叫んだ 違うんだ僕はそんなにいい人間じゃないんだよ 君は知らないんだよ 僕が本当は自分本位で 僕が本当は冷淡で 僕が本当は我が儘で 僕が本当は取るに足らない奴だと言うことを 君に嫌われたくないから ただ君に嫌われたくないから みんなの前でも いい子にしているだけなんだよ 本当の僕を知らない君の前で 正体がばれるのを怖れて 今日も僕はいい人の芝居をするんだよ みじめな気持ちで不本意な芝居をするんだよ |
| 小市民 |
| なぜ僕は毎回必ず投票に行くのでしょう
なぜ僕は人の欠点を言わないようにしてるのでしょう なぜ僕は人の頼みをなかなか断れないのでしょう なぜ僕は戻らないお金を貸すのでしょう 僕の中の小市民が僕を支配しています 本当に心の底からそうしていると言い切れない小市民が 今日も僕をいい人にします 自信を持っていいことをしてるんだと 自ら好んでいいことをしてるんだと 誇らしげに言ってみたいものです |
| クローバーの葉 |
| 公園の水仙の花がみんな切られてから
その切られた茎を見るのがつらかった そこを通るのが嫌だった 久しぶりにうっかりそこへ行くと 水仙の花畑は 一面クローバーの葉っぱに覆われていた 水仙の葉も悲しそうには見えなかった クローバーが僕と水仙を 癒してくれたんだ と思った僕は ようやく犯人を許すことができた気がした 水仙の心は立ち直ることができたけれど 決して救われることのない心の犯人なのだから |
| 霧の夜の一等星 |
| 孤独なあなたの心の中は
霧の夜の一等星 一人寂しく光っているけど 霧に隠れて他の星が 見えてないだけ 時が過ぎて霧が晴れれば 空一面の 星の海 あなたも心の霧を晴らせば きっと沢山 友がいるでしょう |
| 遠くの空に |
| 遠くの空に 過ぎ去った人の面影を見る
遠くの空に あなたの声が聞こえてきそうで 遠くの空に ただ昔の日々を懐かしむ いつか 今日のことも 思い出になる いつか 通り過ぎる人の後ろ姿に はっとしなくなる いつか かえらぬあなたの噂ができるようになる いつの日か 時間が過ぎ去れば 遠くの空も 穏やかに眺めることができるのだろう 今はただ 苦行のように 時間の流れるのを 数えて待っている僕がいるだけ |
| 流れ星 |
| 冬の夜空に
流れ星をみつけて 思い出した 「大人になりたい」 そう願った少年の日 そして今 流れ星をみつめて 僕は心で 「子供に帰りたい」 そう願う大人になった |
| どしゃぶり |
| 突然の土砂降りに 言葉もなく立ちつくす
僕は自転車だというのに 家まで5キロはあるのに なにか呆然と途方に暮れる とろとろと濡れながらチャリで進んでいると 古本屋になぜか「あしたのジョー」のポスター はっと思った 「ジョーのつもりになればいい」 そして僕は豪雨の中をトレーニングのつもりで 全力でチャリをこいだ 自分に酔いながら |
| 想いの丈 |
| 君を呼びだして ぶつけようかと思った
想いの丈を だけど頭に浮かんでくる言葉は キザなセリフばかり 全然僕らしくない やっぱりやめようと思った いつかすんなり言えるといいな すくんだりせずに想いの丈を 背伸びもせずに想いの丈を |
| 微妙な距離 |
| 君って不思議な人だね
別になぐさめの言葉とか かけてくれるわけじゃないのに なぜか心がほっとする ただ一緒にいるだけで なぜか心がほっとする 僕には 君が僕を 好きか嫌いかわからない 僕自身も 僕が君を 好きか嫌いかわからない ただ、今は この微妙な距離を楽しんでいたい 君と僕の間にある この微妙な距離を |